スパスパ弧唄の音楽小旅行

〜日々を彩る音楽名盤紹介ブログ〜

【おすすめ名盤 16】Bill Evans『Waltz For Debby』

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Bill Evans『Waltz For Debby』(1961年録音)

【収録曲】

1. My Foolish Heart

2. Waltz For Debby

3. Detour Ahead

4. My Romance

5. Some Other Time

6. Milestones

 

【演奏メンバー】

Bill Evans(ピアノ)

Scott LaFaro (ベース)

Paul Motian(ドラムス)

 

 

今回はジャズピアニスト、ビル・エヴァンスのアルバムを紹介。

 

このアルバムはジャズの歴史上屈指の大名盤で、よくあるジャズ名盤ランキングみたいのものでは、必ずと言っていいほど上位に入ってくる。ジャズの聖地の1つであるニューヨークの「ヴィレッジ・ヴァンガード」というジャズクラブで、1961年6月25日、ピアノトリオでのライブ録音の一部を収録。このライブの11日後に、ベースのスコット・ラファロが交通事故により25歳というの若さで他界したという事実も、自分にとってこのアルバムを聴く上で欠かせない。

 

語り尽くされているとは思いますが、ビル・エバンスのピアノは何と言いますか、水彩画のように潤っていながらも、少し触れただけで一気にヒビが広がって行きそうな、限りなく薄いガラスのような繊細さを感じる。1曲目「My Foolish Heart」では光と闇の境目をピアノの音で縫っていくような危うさがある。そんなピアノの横で、スコット・ラファロが、自由に溌剌とベースを演奏している。「ベースはバンドのビートを支えるもの」という常識をぶち壊すかのように。いや、実際ぶち壊した。特に3曲目「Waltz For Debby」では、ベースだけに意識を集中して聴いても相当楽しい。今誰がソロを弾いているのか分からなくなるくらい3人が自由に演奏していても、恐ろしいほどの一体感があるのは不思議。

 

このアルバムに対して僕は「美しい」と思って聴いてきた。この文章を書きながら、何で「美しい」と思うのかを考えてみた。

それぞれの楽器の音色や、楽曲そのものの良さ、もちろんそれもあります。色彩に深みを増した夕日や、春の訪れを告げる時にしか見られない桜を見て「美しい」と思う気持ちとも似たこの感覚は何なのか…

 

1961年6月25日、「ヴィレッジ・ヴァンガード」というジャズクラブで、観客はそれぞれ、その時その空間でどんな思いでステージを鑑賞していたのか。11日後に訪れる死を知るはずもない、スコット・ラファロはどんな未来を想像していたのか。ビル・エヴァンスはそんな若者と共にどのような音楽を生み出していきかったのか。そんなことを想像して、このアルバムから「刹那の美しさ」を感じとっていたのかもしれない。

 

ライブハウスなどの密集した会場でライブをすることが懸念される中、その時その空間でしか味わうことのできない「刹那の美しさ」を、また皆で共有できる日がいつか来ることを心から願う。

 

 

自分に何ができるだろうか。それを考え続けたい。


 

参考になれば幸いです。

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

スパスパ弧唄

 

 

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Waltz for Debby

Waltz for Debby